転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


49 索敵魔法は内緒なんだって



「ん? なんじゃその顔は。もしかしてサーチを知らんのか?」

「うん、しらない」

 どうも考えている事が顔に出てたみたいで、お爺さんは僕の顔を見ながら首をかしげてこんな事を言い出したんだ。
 で、確かに僕はサーチと言うものがスキルなのか魔法なのかさえ知らないんだから、素直にそう答えたんだよね。
 でもその僕の返事はお爺さんにとってかなり意外だったようで、不思議そうに首を捻りながらそんなはずはないんじゃがのぉ? なんて言ったんだよね。

「ふむ、サーチを知らないとは、ちとおかしいのぉ。あれは初歩の魔法じゃから、家庭教師に習ったのなら一応は説明くらいは受けるはずなんじゃが」

「へ? ぼく、家庭きょうしに習ったんじゃないよ。まほうは、村のとしょかんにあったご本をよんでおぼえたんだ」

 なんかお爺さんが勘違いしてるみたいだから、僕は間違えてるよって教えてあげた。
 それを聞いたお爺さんは納得したみたいで、サーチがどういうものか僕に教えてくれる気になったみたいなんだ。

「なんと、本を読んで覚えたと言うのか。それはまた凄いのぉ。じゃがそれなら納得じゃな。坊やくらいの歳なら全部の魔法ではなく、比較的派手な魔法を覚えたがるものじゃ。その点このサーチは地味な上に使いどころも限定的な魔法じゃから、子供が覚えたがるとも思えんしのぉ」

 びっくり! サーチって索敵魔法に似てるのにあんまり使えない魔法なんだ。
 でもそっか、やっぱりサーチって魔法だったんだね。
 ドラゴン&マジック・オンラインには無かった魔法って事は、この世界で作られた魔法なのかな? でもこの世界で作られた魔法なら、なんで他の魔法と同じ様に僕の前世の世界の言葉なんだろう? まさか偶然て事はないよね。

 こんな事を1人で悩んでても答えは出ないだろうし、目の前に聞く相手がいるんだから解んない事は聞いた方がいいよね! 答えが出ないかもしれないけど、もしかしたら出るかもしれないもん。

「ねぇ、おじいさん。サーチってどんなまほう? それに、サーチはなんでサーチってじゅもんなの?」

「ふむ、そう言えば効果の説明がまだじゃったのう。サーチという魔法は暗闇の洞窟や煙が充満して前が見えない時などに使って、そこに生き物がいるかどうかを調べる呪文なんじゃ」

 なるほど、サーチは確かに僕の索敵魔法に似てる魔法だね。
 でもさ、居るかどうかが解るだけの魔法って言うのなら目的の獲物が居る場所は解らないって事だよね? なら使い道、無くない?
 僕はそんな風に思ったんだけど、ところがそんな考えが如何に応用力のないお子様の考えなのかと言う事を、この後僕は思い知らされる事になったんだ

「こう言うと地味に聞こえるかもしれないが、落盤事故や火災の時などにはとても役立つ魔法なんじゃよ。なにせ、岩や壁などの向こう側にいたとしても生き物を見つけることができる呪文なのじゃからな。それに使い方次第では迷宮や遺跡でこの呪文を使い、待ち伏せする魔物を見つけると言う使い方もできるそうじゃ」
 
 なるほど、そういう使い方があるのか。
 それに壁とかは素通りして生き物だけに反応する所なんて、確かに僕の索敵魔法に似てるね。
 でもそんな魔法を作るくらいなら僕の索敵魔法みたいにしちゃった方が便利なんじゃないかなぁ? なんて思ったんだけど、ところがそう思って聞いてみたらそれは流石に無理だろうって言われちゃったんだ。

「さっきの説明からすると、坊やがやっている方法はかなり高度な魔力操作技術が必要なのではないかな? ならばそれを魔法にしたとしても、かなり高レベルで無ければ発動させる事すらできないじゃろうて」

 だってさ。
 そう言えばキャリーナ姉ちゃんに教えようとしたけど、いくらやろうとしてもできなかったっけ。
 お姉ちゃんはもうある程度キュアを使いこなしてるから魔力操作は慣れてきてるはずなのに、あれだけ教えてもできないって事はやっぱり難しいんだろうなぁ。

「それだけにそれが使える坊やはかなり特殊なんじゃ。だからこの魔法に関してはあまり話して周るべきではないと思うぞ。よからぬ者の耳に入れば、どんな厄介事に巻き込まれるか解らんからのぉ」

「ええ、そうなの!? でもぼく、お父さんにこのまほうのこと、言っちゃったよ?」

「ほっほっほっほ、ご両親やご兄弟相手なら問題は無かろう。知らない人が居る所ではあまり話すべきではないと言うだけの事じゃ」

 そっか、良かった。
 秘密にしなきゃいけないって言うのなら、村の人たちと狩りに行ったりした時は使えなくなっちゃうからどうしようって思っちゃったよ。

「ただ知っている人の前だけで使うとしても、この魔法が使える事が広まると悪しき者に目をつけられるかもしれないと注意されたと言う事はだけ伝えておくべきじゃな。そうしないと別の誰かから坊やがこの魔法を使えることが広まってしまうかもしれないからのぉ」

「うん、わかった! あとでお父さんにもそう言っておくね」

「うむ、その方が良かろう」

 ちゃんと忘れずにお父さんに言わないとね。
 お父さんの事だから、お酒とか飲んじゃったらうっかり言っちゃいそうだもん! きちんと注意しておかないと。

 僕はふんすっ! と気合を入れて、そう決意したんだ。

「ところで坊や。先ほどなにやらもう一つ、聞きはしなかったかのぉ?」

「うん! ぼく、おじいさんのお話を聞いて、何でなのかなぁ? って思ったからちゃんと聞いたんだ  。あのねぇ、サーチってどうしてサーチってじゅもんなの? それにどうしてサーチってとなえるとサーチのまほうが使えるってわかったの?」

 僕がそう教えてあげると、お爺さんはそうじゃったそうじゃったと言って、長いお髭を撫でながらうんうんと頷いたんだ。

「サーチに限らず魔法と言うのはある言語を基に作られておっての、その言語を使って意味を成す言葉を作り、それに魔力を籠めると魔法が発動する事があるんじゃよ。そうじゃのぉ、マジックミサイルという魔法は知っておるかな?」

「うん! ぼく、お父さんといっしょにきのう、そのまほうでまものをかったんだよ!」 

 とってもなじみの魔法が出てきたから、僕は嬉しくなってそう自慢したんだ。
 そしたらお爺さんは嬉しそうに笑って、偉い偉いって僕の頭を撫でてくれた。

「そうか、坊やは優秀な魔法使いでもあったか。そんな坊やが得意としておるマジックミサイルも魔法を現す”マジック”と飛ばすを意味する"ミサイル"をつなげて作られた言葉でのぉ、つなげると魔法を飛ばすとなるわけじゃ」

 そう言えば狩りの時にお父さんがマジックミサイルの事を物理攻撃だって言ってたけど、魔力を固まりにして矢のように飛ばしてるって考えれば確かに物理攻撃のような効果が出てもおかしくないよね。
 でもさぁ、今ので呪文がこの世界でも知られている言語だってのは解ったけど、それだともっとおかしな事にならない? だってその言語は僕の前世のものと同じなのに、あっちの世界では魔法なんて無かったんだよ? 魔法が無い世界の言葉がなんで魔法のトリガーになってるのさ?

「おじいさん、まほうがぼくたちが使ってる言葉とちがうってのはわかったよ。でも、なんでその言葉がまほうに使えるってわかったの?」

「おお、それはのぉ」

 そこからおじいさんが語ってくれた話は、ちょっと不思議でとっても意外なものだったんだ。


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